2026年から残業代が大幅アップ。会社が教えてくれない「1.75倍支給」の対象者と注意点
1.75倍支給 :「2026年から残業代が大幅アップ」「条件によっては1.75倍になる」といった話を見て、気になっている人は多いはずです。ですが最初に整理しておきたいのは、この1.75倍が“2026年から急に全員に適用される新ルール”というわけではないことです。
実際には、日本の割増賃金制度の中で、一定の条件が重なったときに1.75倍以上になる仕組みがすでにあります。だから本当に重要なのは、「2026年から何が起きるのか」だけではなく、「自分がその条件に当てはまっているのに、正しく支払われていない可能性はないか」を知ることです。
特に見落とされやすいのが、月60時間を超える時間外労働と深夜労働が重なったケースです。会社によっては説明がかなりあっさりしていたり、給与明細を細かく見ないと気づかなかったりするため、働く側がルールを知らないまま過ごしていることも珍しくありません。
結論から言うと
- 1.75倍は、すべての残業に適用されるわけではありません。
- 対象になりやすいのは「月60時間超の時間外労働」かつ「深夜帯の労働」が重なった人です。
- 深夜残業だけでは通常1.5倍までです。
- 法定休日労働は基本1.35倍で、深夜が重なると1.6倍相当になります。
- 給与明細で区分を確認しないと、見逃しやすいです。
まず知っておきたい:残業代は一種類ではない
日常会話では全部まとめて「残業代」と言いますが、法律上の割増賃金は細かく分かれています。ここを理解していないと、1.75倍の仕組みは見えてきません。
主に見るべき区分は次の4つです。
- 法定時間外労働
- 深夜労働
- 法定休日労働
- 月60時間超の時間外労働
同じ「遅くまで働いた」という状態でも、何時に働いたのか、法定労働時間をどれだけ超えたのか、休日だったのか、月の累計残業がどこまで行っているのかで倍率は変わります。
1.75倍になる仕組み
1.75倍は、ひとつの特別な単独ルールではありません。二つの割増が重なってできる数字です。
具体的にはこうです。
- 月60時間を超えた時間外労働の部分 → 1.5倍以上
- その時間が深夜帯(22時~翌5時)に重なる → さらに0.25加算
つまり、
1.5+0.25=1.75
となります。これが「1.75倍支給」の正体です。
ここで大事なのは、深夜残業そのものが1.75倍になるのではないということです。月60時間を超えた部分でなければ、深夜の法定時間外労働は通常1.5倍です。
対象者は誰か
1.75倍の対象になりやすいのは、次の条件に当てはまる人です。
1. 月の時間外労働が60時間を超える人
まず絶対条件に近いのがこれです。月60時間を超えていないと、1.75倍にはなりません。長時間残業が慢性化している部署、繁忙期のある業種、納期集中型の仕事では特に注意が必要です。
2. 22時以降にも残業している人
月60時間を超えたうえで、その超過部分が22時~翌5時の深夜帯に入っていると1.75倍の可能性が出てきます。
3. シフト勤務や夜間対応が多い人
システム運用、物流、医療・介護、警備、接客、製造、報道、クリエイティブ系など、夜まで業務が続きやすい仕事では、条件が重なりやすくなります。
4. 「管理職扱い」されていても実態が一般社員に近い人
名ばかり管理職の問題があるように、肩書きだけで残業代対象外のように扱われていても、実態によっては本来対象になるケースがあります。ここはかなり重要です。
逆に、対象にならない人は?
1.75倍という言葉だけが一人歩きしやすいので、対象外になりやすいケースも整理しておいたほうが分かりやすいです。
| ケース | 主な倍率の考え方 | 1.75倍になるか |
|---|---|---|
| 通常の法定時間外労働 | 1.25倍以上 | ならない |
| 深夜の法定時間外労働 | 1.5倍以上 | 通常はならない |
| 法定休日労働 | 1.35倍以上 | ならない |
| 法定休日労働+深夜 | 1.6倍相当 | ならない |
| 月60時間超の時間外労働 | 1.5倍以上 | 深夜が重ならなければならない |
| 月60時間超の時間外労働+深夜 | 1.75倍以上 | なる |
「会社が教えてくれない」と言われる理由
ここはかなり現実的な話です。会社が意図的に隠しているというより、説明が不十分だったり、給与計算がブラックボックスになっていたりして、結果として従業員が知らないままになっているケースが多いのです。
理由としては主に次のようなものがあります。
- 給与明細の内訳が分かりにくい
- 時間外、深夜、休日の区分が明細で見えにくい
- 月60時間超の残業が別管理されていないように見える
- 就業規則を読む人が少ない
- 説明会では基本的な残業ルールまでしか話さない
つまり、会社が大々的に「あなたは1.75倍対象です」と教えてくれるとは限らないのです。だからこそ、自分で確認する必要があります。
計算イメージを簡単に見る
たとえば、基礎時給が2,000円だとします。
- 通常の時間外労働 → 2,000円 × 1.25 = 2,500円
- 深夜の時間外労働 → 2,000円 × 1.5 = 3,000円
- 月60時間超の時間外労働 → 2,000円 × 1.5 = 3,000円
- 月60時間超+深夜 → 2,000円 × 1.75 = 3,500円
同じ1時間でも、通常残業と1.75倍対象では1,000円の差が出ます。これが10時間、20時間と重なるとかなり大きいです。だからこそ、見逃しは金額的にも痛いのです。
注意点1:深夜残業=全部1.75倍ではない
最も多い誤解がこれです。22時以降に働いたから全部1.75倍になる、と思っている人は意外と多いですが、それは違います。
深夜帯の残業でも、月60時間を超えていないなら通常は1.5倍です。1.75倍になるには、「月60時間超」という条件が追加で必要です。
この点を知らないと、本当は1.5倍が正しいのに「会社がおかしい」と誤解することもありますし、逆に本当に1.75倍になる場面を見逃すこともあります。
注意点2:法定休日労働とは別で考える
休日に働いた場合も注意が必要です。法定休日労働の基本は1.35倍です。そこに深夜が重なれば1.6倍相当になります。
ここもよく混同されますが、「休日だから1.75倍」「夜だから1.75倍」という単純な話ではありません。休日の割増と、月60時間超の時間外割増は別の枠組みです。
注意点3:給与明細だけでは分からないことがある
明細に「残業手当」としか書かれていない場合、どこまでが通常の時間外で、どこまでが深夜で、どこからが月60時間超なのか分からないことがあります。
確認すべきポイントは次の通りです。
- その月の時間外労働が何時間あるか
- 22時以降の労働が何時間あるか
- 月60時間を超えた部分がどこか
- 明細で区分ごとに支払われているか
- 就業規則や賃金規程でどう定めているか
もしここが見えないなら、「何となく払われている」状態です。そういう状態は、働く側にとってかなり不利です。
注意点4:2026年から急に新設されたルールと勘違いしない
見出しで「2026年から大幅アップ」と書かれていると、まるで新制度が始まるように見えます。ですが実際には、1.75倍という考え方自体は条件付きの既存ルールの延長線上にあります。
そのため、本当に重要なのはニュースのインパクトではなく、自分の勤務実態と照らして対象になるかどうかです。派手なタイトルより、自分の残業時間と深夜時間のほうがはるかに大事です。
こんな人は特に確認したほうがいい
- 毎月残業が多い人
- 締切前に深夜残業が続く人
- 夜勤や遅番がある人
- 人手不足の部署にいる人
- 管理職扱いだが裁量が小さい人
- 給与明細の区分が曖昧な人
このどれかに当てはまるなら、自分が1.75倍の対象になっていないか、一度は確認したほうがいいです。
自分でチェックする手順
- 1カ月の残業時間を集計する
- そのうち22時~翌5時の時間を抜き出す
- 月60時間を超えた残業があるか確認する
- 超過部分のうち深夜帯にかかる時間を確認する
- 給与明細の支給額と照らし合わせる
この流れで見れば、自分が「なんとなく忙しい人」なのか、「本来1.75倍の対象になりうる人」なのかがかなり見えやすくなります。
まとめ
2026年から残業代が大幅アップすると言われる背景には、条件が重なると1.75倍以上になる割増賃金の仕組みがあります。ただし、それはすべての人に一律で適用される話ではありません。
対象になりやすいのは、月60時間を超える時間外労働をしていて、その超過分がさらに深夜帯にかかっている人です。逆に、深夜残業だけ、休日労働だけでは通常1.75倍にはなりません。
一番の問題は、対象者なのに自分で気づいていないケースがあることです。会社が細かく教えてくれないこともある以上、残業時間、深夜時間、給与明細の区分を自分で確認する意識が必要です。1.75倍は派手なニュースの話ではなく、条件に当てはまる人にとってはかなり現実的なお金の話です。
よくある質問
2026年から全員の残業代が1.75倍になるのですか?
なりません。1.75倍になるのは、月60時間を超える時間外労働のうち、深夜帯にかかった部分など、条件が重なったケースです。
深夜残業なら全部1.75倍ですか?
違います。深夜の法定時間外労働は通常1.5倍です。1.75倍になるには、さらに月60時間超の条件が必要です。
法定休日に働いたら1.75倍ですか?
法定休日労働の基本は1.35倍です。深夜が重なれば1.6倍相当ですが、通常は1.75倍とは別枠です。
どんな人が対象になりやすいですか?
長時間残業が多く、かつ22時以降の勤務が発生しやすい人です。夜勤、シフト勤務、繁忙期のある職種で起こりやすいです。
給与明細で何を見ればいいですか?
時間外、深夜、休日の区分と、月60時間超の時間が別管理されているかを確認するのが重要です。
会社が説明してくれない場合はどうすればいいですか?
まず自分の勤務実績と給与明細を確認し、就業規則や賃金規程も見てください。区分が曖昧なら、会社に具体的に確認する必要があります。
名ばかり管理職でも対象になることはありますか?
あります。肩書きだけでなく実態が重要なので、管理職扱いでも労働時間や権限の実態次第では対象になる可能性があります。




